【2024年6月】国内マーケット情報

円安と個人消費低迷で3カ月連続悪化、企業も多くのコスト増に苦しむ

景気動向指数の観点
・悪化:前月比0.2ポイント減の43.3(3カ月連続で悪化)
・要因:円安によるコスト負担の増加と個人消費の落ち込み

業況動向指数の観点
・悪化:前月比4.8ポイント減の▲16.2(全業種1.0ポイント以上の悪化は2022年9月以来)
・要因:資源・原材料価格の高止まりや円安、賃上げ、輸送費の上昇などによる複合的なコスト負担増加

景気動向指数での観点

国内景気は4年1カ月ぶりに3カ月連続で悪化~ 個人消費の停滞や円安にともなうコスト負担の高まりが下押し要因に ~

景気DIは43.3で、前月より0.2ポイント低下し、3カ月連続で悪化しました。
主な原因は、円安によるコスト負担の増加と個人消費の落ち込みです。
今後も日本銀行の追加利上げや人手不足が続くため、景気は横ばい傾向が続くと予想されています
個人消費に関しては、個人消費DIが42.8となり、前月より0.5ポイント下がり、2カ月連続で落ち込みました。
企業からは、消費者が節約志向になっていることに対する懸念の声が多く寄せられています。

業界別

経済全体のうち10の主要な業界のうち6つの業界が悪化しました。
個人消費が低迷し、さらに円安により輸入原材料の価格が高くなったことや人件費の上昇が経済に負担となっています。
一方で、海外からの観光客(インバウンド需要)や半導体関連の需要、ホテル業界の設備投資などが経済にとってプラスの要素でした。

 農・林・水産金融建設不動産製造卸売小売運輸・倉庫サービスその他
状態悪化悪化改善改善改善悪化悪化改善悪化悪化
前月比▲1.8▲0.40.40.30.2▲0.4▲0.40.1▲0.5▲0.3
<span class="bold-green">プラスの声</span>
プラスの声
  • 北海道新幹線の延伸工事がある(土木工事)
  • TSMCの進出により不動産に活気がある(土地賃貸)
  • 国内外の各完成車メーカーからの受注が堅調(動力伝導装置製造)
  • 輸送、保管ともに問い合わせが増加している。円安で輸入コンテナが減少したが輸出コンテナは増加している(集配利用運送)
<span class="bold-red">マイナスの声</span>
マイナスの声
  • 仕入価格の上昇や燃料費の高騰、販売価格の低下などによる影響(素材生産サービス)
  • 保険業界の不祥事が続発するなかで利益が出せず、人員の縮小や経費の圧縮が起きており、全体的に悪い雰囲気が漂っている(損害保険代理)
  • インフレによる倹約で嗜好品である酒類の消費が低調である(酒類卸売)
  • 原材料高と消費不振がダブルで悪影響を与えている(化粧品小売)
  • 物価高騰により、外食する回数やかける金額が若干減少傾向にあるように感じる(中華・東洋料理店)

帝国データバンク景気動向調査より)

業況動向指数での観点

円安は、5割超の企業にデメリット原材料・エネルギー価格の上昇が多くの企業に悪影響

業況DIは前月比で4.8ポイント減少し、▲16.2となりました。
この悪化の背景には、資源・原材料価格の高止まり、歴史的な円安、賃上げ、輸送費の上昇などの要因が複合的に企業のコスト負担を増加させていることがあります。
特に建設業や卸売業では、働き方改革関連法による輸送費や労務費の上昇が見られ、需要が十分に取り込めていません。製造業でも企業の設備投資が鈍化し、需要の伸び悩みが続いています。小売業やサービス業では、訪日外国人観光客による需要は堅調ですが、物価高が消費者の購買意欲を低下させ、全体として消費が低迷しています。
このような状況から、全業種で業況が悪化し、特に全業種で業況DIが1.0ポイント以上悪化したのは2022年9月以来のことです。

業界別

 建設業製造業卸売業小売業サービス業
状態悪化悪化悪化悪化悪化
前月比▲2.2▲4.0▲8.5▲5.6▲5.2

建設業:悪化

建築資材の価格が高騰していることや、住宅関連を中心とした民間工事の受注が低迷している状況が続いています。
また、技術者などの専門人材が不足している中で、働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が加わり、人手不足が一層深刻化しています。

「原材料の高騰が続く中、人材確保に向けて賃上げにも努めているが、業界全体が人手不足であり、恒常的に人手が足りない」(防水工事業)

製造業:悪化

輸入材料やエネルギー価格の高騰が続いているため、企業のコスト負担が増加しています。
その結果、消費者の購買意欲が低下し、特に飲食品の需要が減少していることが指摘されています。
さらに、円安の影響で仕入れ価格が上昇し、外国人労働者の採用にも支障が出ているとの声が上がっています。

「円安基調により再び原材料価格が上昇しており、再度の価格転嫁を進めざるを得ない状況である。しかし、長引く物価高・実質賃金のマイナスが継続しているため、最終消費者の購買意欲が低下しており、値上げによる販売数量の減少を危惧して足踏みしている」(パン・菓子製造業)

卸売業:悪化

2024年に予測される物流の問題により、輸送費が大幅に増加しています。
さらに、円安が進行しているため、輸入コストも上昇しており、これが企業にとって大きな負担となっています。
加えて、消費が低迷しているため、飲食品関連の需要が減少しており、業界全体に停滞感が漂っています。
企業は価格を転嫁しようとしていますが、仕入れ価格の度重なる高騰に追いつけず、苦しい状況が続いています。

「物価高による消費者の購買意欲の低下が大きく、少しでも安価な商品を購入するようになっている。仕入価格や運送費の上昇分を販売価格に転嫁しているが、何度も値上げは行えないため、収益を圧迫している」(農畜産水産物卸売業)

小売業:悪化

物価の上昇が消費者の購買意欲を低下させており、特に専門小売店や商店街での売上が伸び悩んでいます。
この状況に加えて、円安の影響で輸入品の価格が上昇しており、さらに電気代などの光熱費も増加しています。

「インバウンド需要の高まりで、外国人観光客による免税品の売上は好調が続いている。一方、地域顧客の購買意欲の低迷や、電気代の高騰等に伴うコスト増により、総じてみると売上・収益ともに伸び悩み状態にある」(百貨店)

サービス業:悪化

インバウンド需要(海外からの旅行者による需要)は安定しているものの、電気代や労務費などの光熱費の上昇が企業にとってコストの負担となっています。
さらに、物価の上昇が消費者の購買意欲を低下させ、国内観光需要も一時的に落ち着いているため、飲食業や宿泊業、生活サービス業において景気が悪化しています。

「円安による備品等の価格の上昇に加え、電気代も高騰しており、経営は苦しさを増している。また、物価高で顧客の来店頻度・客単価の双方が下がっており、これ以上の顧客離れを懸念して料金改定も行えない」(理容業)

商工会議所LOBO調査より)

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