【2024年4月】国内マーケット情報

急速な円安と原材料価格の高止まりによるコスト増加に直面し、広範な業界で業況が悪化しています。しかし、賃上げや消費拡大などにより、今後の緩やかな回復が期待されています。

景気動向指数の観点
・悪化:2024年4月の景気DIは前月比0.3ポイント減の44.1で、2カ月ぶりに悪化。
・要因:急速な円安進行とコスト負担の高まりによる国内景気の後退。

業況動向指数の観点
・悪化:全産業合計の業況DIはマイナス14.0で、前月比1.1ポイント減。
・要因:歴史的な円安、人手不足、働き方改革関連法の施行による輸送費上昇、賃上げなどでコスト増加。

景気動向指数での観点

原材料価格の高止まりや不十分な価格転嫁が下押し要因に

  • 2024年4月の景気DIは前月比0.3ポイント減の44.1となり、2カ月ぶりに悪化しました。
  • 国内景気は、急速な円安の進行やコスト負担の高まりが原因で2カ月ぶりに後退しました。
  • ただし、今後は賃上げなどにより緩やかな持ち直しが予想されています。
  • 外国為替レートは2021年以降円安傾向が続いており、2024年4月の月中平均は1ドル=153.7円でした。
  • 企業からは円安による原材料価格の高騰を懸念する声が多く寄せられました。

業界別

  • 10業界中6業界が悪化し、2業界が改善しました。
  • 特に原材料価格の高止まりが幅広い業種に影響を与えています。
 農・林・水産金融建設不動産製造卸売小売運輸・倉庫サービスその他
状態悪化悪化悪化横ばい悪化悪化改善横ばい悪化改善
前月比▲0.4▲0.4▲0.40.0▲0.5▲0.40.30.0▲0.11.0

景気の全体感

<span class="bold-green">プラスの声</span>
プラスの声
  • 半導体業界は好況である。その他の業界の動きは緩慢だが、ある程度の仕事量は確保できている(製缶板金)
  • 自動車産業が堅調である(非鉄金属卸売)
  • 円安により中古輸出車の相場が高値で安定しており好調(中古自動車小売)
  • 貸切バスは供給量が減ったため価格も大幅に上がりバブルである(一般旅行)
  • 投資用マンションの建築受注が良好。原材料・人件費の高騰分も施工単価に転嫁できている(電気配線工事)
<span class="bold-red">マイナスの声</span>
マイナスの声
  • 施工案件はあるが人手不足により対応できない。また、外注費や材料費は上がっているが受注単価には反映できていない(土木工事)
  • 自動車関連では、中国向け輸出減、カーメーカー各社の不正問題などにより業界全体で前年度と比較し生産台数は低下傾向(自動車部分品・付属品製造)
  • 原油価格も上昇し、労働時間の制限にともない運行内容を見直したために売り上げも減少。運賃の値上げ交渉しているが、非常に難しい(一般貨物自動車運送)
  • 売り上げは増加しているものの、ガソリン代など諸経費の高騰により利益率が減少傾向。価格転嫁は難しい(園芸サービス)
  • 倒産件数、リスケ相談が増加している(信用金庫・同連合会)

帝国データバンク景気動向調査より)

業況動向指数での観点

一層のコスト増と消費停滞で、悪化先行きは、消費拡大等による改善への期待高まる

  • 全産業合計の業況DIは、マイナス14.0で、前月比で1.1ポイント下がりました。
  • 歴史的な円安や深刻な人手不足、働き方改革関連法の施行による輸送費の上昇や賃上げなどで、コストが増加しています。
  • これにより、労務費などの価格転嫁が追いつかず、業況が再び悪化しました。

業界別

 建設業製造業卸売業小売業サービス業
状態ほぼ横ばい悪化ほぼ横ばい改善改善
前月比▲0.4▲0.4▲0.40.0▲0.5

建設業:ほぼ横ばい

  • 資材価格の高騰や住宅関連の民間工事の受注不振が続いていますが、公共工事の受注が堅調で、全体としてはほぼ横ばいです。
  • 働き方改革関連法の施行に伴い、人手不足への懸念が高まっています。

「働き方改革関連法が施行されたが、事前に発注者や設計会社と連携を図っていたことで、問題なく対応ができている。また、下請け企業にも施行に伴って割り増しで賃金を支払う等、円滑な業務遂行に努めている。しかし、繁忙期に適切な人員数の確保ができるかは不安が残る」(一般工事業)

「公共工事を中心に価格転嫁は行えているが、物価の上昇が続いているため、すべてを価格に転嫁できてはいない」(土木工事業)

製造業:悪化

  • 歴史的な円安の影響で輸入部材や輸送費が高騰し、コストが増加しています。
  • また、企業の設備投資が停滞しているため、一般機械器具や電子機器関係を中心に業況が悪化しています。
  • 需要の停滞による在庫調整で売上が減少しているとの声も聞かれます。

「受注生産の都度、価格協議に取組み受注金額を上げる努力を行っている。一方、円安による原材料・エネルギー価格の高騰や、物流2024年問題による輸送費等の仕入れコストの上昇、賃上げによって労務費が増加しており、採算は改善されていない」(通信機械器具製造業)

「取引先の新品在庫が過剰なため、部品調達を控えられており、売上が減少している」(金属加工機械製造業)

卸売業:ほぼ横ばい

  • 働き方改革関連法の施行に伴う輸送費の上昇や、歴史的な円安による輸入コストの高騰が続いています。
  • しかし、国内外の観光需要の増加により、飲食・宿泊関連からの引き合いが増えており、全体としてはほぼ横ばいです。

「固定費の推移を会計ソフトで見える化し、随時適正な価格設定を行っている。目下の課題は、物流2024年問題による配送業者の人手不足に伴う納品遅延の発生等である。取引先に対して早めに注文書を送ってもらう等、余裕を持って対応できるよう努めている」(食料・飲料卸売業)

「物流2024年問題に伴い、取引先への納品遅延や、最低発注数の引き上げに伴う在庫数の増加で、保管料等のコストが上昇している」(包装資材卸売業)

小売業:改善

  • 物価の高止まりで消費者の買い控えが続いていますが、新生活用品などの季節需要やインバウンド需要の増加により、百貨店の売上が好調で、全体として改善しています。
  • しかし、政府の激変緩和措置の終了に伴う電気代の負担増を心配する声もあります。

「固定費の推移を会計ソフトで見える化し、随時適正な価格設定を行っている。目下の課題は、物流2024年問題による配送業者の人手不足に伴う納品遅延の発生等である。取引先に対して早めに注文書を送ってもらう等、余裕を持って対応できるよう努めている」(食料・飲料卸売業)

「物流2024年問題に伴い、取引先への納品遅延や、最低発注数の引き上げに伴う在庫数の増加で、保管料等のコストが上昇している」(包装資材卸売業)

サービス業:改善

  • 国内外の観光需要の高まりや歓送迎会などの季節需要の恩恵を受け、飲食・宿泊業を中心に業況が改善しています。
  • ただし、人手不足で需要増に対応しきれず、人材確保のための賃上げによるコスト増に苦労しているとの声も聞かれます。

「コロナ禍で始めたテイクアウト事業が好調な中、今年は歓送迎会の予約も堅調に推移しており、売上・採算ともに改善に向かっている。一方、人手不足は深刻さを増しており、人材確保に向けて高水準での賃上げを図りたいが、価格転嫁も道半ばのため、原資確保に向けて業務改善を図りたい」(飲食店)

「働き方改革関連法の施行に向け、価格交渉を行ってきた。多くの取引先には値上げを承諾してもらえたが、取引中止となった企業もあった」(運送業)

商工会議所LOBO調査より)

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